大会企画シンポジウム

(敬称略)

心理臨床と医療の協働に活かすREBT

心理臨床と医療は、対象(来談者、患者)の「いのち」を尊重する点で共通している。一説によると、いのちの定義は三層構造で説明できると言われている。すなわち、生物学的な「生命の意味するいのち」、問題解決のための発達課題としての「一生涯の意味するいのち」、人生哲学としての「人生の生き方を意味するいのち」である。この三者が入れ子状態になっている構造として、いのちを捉えられるというのである。

 

心理臨床領域においては、心の健康に資する予防教育からセラピーに至る幅広い分野が実践とともに研究されている。医療との接点においては、患者が「生命の意味するいのち」の問題でもある重篤な病気と向き合う支えになることを目的とした看護カウンセリングが必要とされているところでもある。

 

医療は、抗生物質やワクチンの発明に発端に、IPS細胞の再生医療への応用に至るまで、「生命を意味するいのち」を伸延させるための目覚ましい進歩が見られる。その一方で、喫煙を代表とする依存症や、食生活等生活スタイルに起因する糖尿病やメタボリック症候群は蔓延し、「いのちの問題」として患者や医療者の前に立ちはだかっている。これらの問題を解決していくためには、「一生涯の意味するいのち」「人生の生き方を意味するいのち」に踏み込んだ医療が必須となっていくだろう。

 

アルバート・エリス博士の健康観である「人生を楽しむ姿勢」と「生き抜く力」の両立は、心理臨床において向き合ういのちの問題と、医療の課題としてのいのちの問題を考える大きなヒントになるかもしれない。

 

そこで、今回のシンポジウムでは、両分野・異業種の専門家がいのちの視点を踏まえ、それぞれの体験を語ることで、いかなる協働ができるかを検討していきたい。一回の短時間では全容が明らかになるには程遠い遠大な課題であるが、学際的な協働作業に向けた姿勢を分かち合う初めの一歩としていただけたらと思う。

<企画>

聖徳大学心理・福祉学部心理学科教授/本学会理事長 菅沼 憲治

 

<司会>

筑波大学人間系教授 沢宮 容子

 

<シンポジスト>

(医師)新中川病院 加濃 正人

(臨床心理士)聖徳大学心理・福祉学部心理学科 河野 千佳

(看護師)聖徳大学看護学部 吉澤 裕子

(保健師)東京大学学際情報学府 大坪 陽子

 

<指定発言>

聖徳大学心理・福祉学部心理学科教授 岡堂 哲雄